家出女の日記

日曜。
夜中に駅まで迎えに来てくれた佐々木は、もしゃもしゃと泣きながら笑おうとする自分に、
まず「無理して笑わんでいーから~」と言った。

「いやあ、自分で言うのもなんやけど、男って馬鹿よー。失ったものの大きさに
その時は気付けないの。後から気付くの」と、佐々木は彼をかばうように言うので、
「そんなん、知っとるよ」と返したら、
「いやいや、女の人が思ってる以上に馬鹿だからホンマに!」と言い切られた。

そんで、家まで歩きながら、
「これを期に別れるのも彼に成長の機会を与えるという意味ではいいかもしれないけど、
衝動的に別れをつきつけては自分が後悔するから、落ち着いて答えがでるまで考えなさい」
といった主旨のことを言ってくれた。

今日は佐々木が出張でいないので、ごろごろしながら、
できる限り落ち着いてこれからのことを考えている。
全然まとまらない。困ったなあ。

一週間足らずでは無理かなあ。。
神戸に来て、何日目だ。いちにいさんしい、四日?

うそ。まだ四日。

どおりで、佐々木をたびたび彼の名で呼びそうになるわけだ。
……まだるっこしくて忌ま忌ましい私の舌。
名前に詰まったその一瞬あと、いつもめちゃくちゃ悲しくなる。
けど、私はまあ、概ね元気です。

こっちに逃げてきてから、一ヶ月振りにご飯を三食ちゃんと食べられるようになった。
夜は二時間置きに目が覚めるけど、会社で居眠りせずに済む程度には寝れている。

うん。とりあえず、なんとかなっている。

憂鬱は晴れないし、これからなにをどうするか、サッパリ明日が見えないけど、
大阪の家にいたら酷いことになっていたと思うし、ひとまず今はこれでよしってことでいいのかな。

行き着く先が同じであれ、急勾配を行くのと緩やかな坂を行くのでは疲れ方が違う。
自分の状態に合った道を選ばねばならない。私はいまはエネルギー切れなのでゆっくり進みたい。

でも、実際問題、これからどうしよう。

知らない街に居ると気が紛れて良いのだけど、思考停止に陥りそう。

日曜のお昼、どうしても用事があって北加賀屋の家に一旦
帰らねばならないのだけど、すごく恐い。
蓋しているものがあふれだす。

もう寝るか。寝よう。逃げよう。寝逃げでリセットだ。