小学生のころ名札をつけるのが嫌だったはなし

子どものころにモヤモヤしていたどうでもいいことを思い出した。
先週のワークショップで子ども時代を掘り起こす機会があったせいかな。

どうでもいいことを書いていい場所があるんだってことを忘れていた。

以下は小学校の名札に纏わる、私の個人的な思い出話とただの愚痴である。

 

私は小学3年生のときに神奈川県から兵庫県に越している。
転入先の小学校で、全学年の生徒が異なる色の名札をつける風習に馴染めなかった。

何度も先生に注意された。
でも小学校を卒業するまで「忘れました」とかなんとか適当言ったり、先生が近づいてきたときに腕で死角を作ったりして逃れていた。

名札をつけたくなかった理由は3つある。

ひとつ。
単純にお気に入りの服に穴が空くのが嫌すぎた。
日頃、名札はポケットに入れていて、先生がいるときだけ名札をカーディガンのボタンに引っ掛けたりしていた。すぐ落ちるんだけど。

ふたつ。
私の旧姓は『大吟醸 輝子』みたいな名前である。市内に一世帯しかないめちゃくちゃ目立つ姓で、特定しやすすぎるのが嫌だった。
結婚して没個性的な名前になったとき心底ホッとした。

みっつ。
神奈川県の小学校では1年生の1学期のみというごく限られた期間しか名札をつけなかった。
みんなが名前を覚えた頃に、「名札はもうつけなくても良い」と指導された。

そう!!!
私は「名札はもうつけなくても良い」と指導されたんだよ。

理由もしっかり覚えている。
“悪い大人に名前がわかってしまうから”だ。

「〇〇ちゃん、お父さんが病院に運ばれたんだ。急いで向かおう」と、嘘をついて知らない人に車に乗せられたりする危険がある。
だから名札をつけていると危ないんだよ、と、神奈川県横浜市の小学校の先生は私たちに話した。

 

転入先の小学校は、関西地方の端の端。山山山海に囲まれた閉鎖的な田舎町にあった。

担任のおじいちゃん先生は、ある日の朝礼で
「名札をつけるのは所属の表明や。悪いことをしたときにドコドコ小学校のダレダレがナニナニしとったと街の人が教えてくれる。だから名札はつけなアカン。〇〇小学校の生徒として自覚を持った行動をしなさい」と言った。

幼かった私は「いや名札つけてると危ないと教わったし、私はべつに悪いことしないし……“〇〇小学校の子はきちんとしてるね”と街の人から見られたいなんて完全に大人の都合では……知らんがな……」と、言葉にならない思いを抱えながら先生の話を聞いた。

関東訛りの私は言葉の壁に苛まれていた。
「なんかムカつく」という理由で、一部の男子から意地悪をされることがあった。
引っ越しは私にとって最悪だった。
「あー幼児期からコツコツ築き上げた人間関係も親の都合ひとつでブチ壊れるんだなー」と絶望した。

さらに悪いことには3年生から4年生にかけてクラス替えがなかった。
おしゃべりする女子もチョコチョコいたんだけど、人間関係が出来上がっている中に私が飛び込んでいる構図なので“友だち”というより“クラスメイト”という義理の関係だった。
お昼休みを一人で過ごしながら、
「私は何を反省して、どう直せばいいんだろう……これって性格がどうとかいう問題じゃなくない? あ、言葉か!?言葉を直せばいいのか??」などと考えていた。
(なお、関西弁の言語習得に力を入れた甲斐あってか5年生でクラス替えをして無事友だちができた……涙)

小学校の外に広大な世界がある。どうせ卒業する。人間関係は入れ替わる。
そんなちっぽけな世界でどう扱われようがさしたる問題ではないと、早い段階で知れたのはいま振り返るとおトクだったのだが、とにかく当時の私にとっては先生がおっしゃる「小学校全体の規律」とか「所属の意識」とか、何度指導されようがマ・ジ・で・知らんがな!!!!!の一言だった。

まあでも、わざわざ先生に意見する気概も無ければ語彙も無かったよね。普通に聞き流した。

 

子を持つ身になったいま、児童は名札をつけるべきか否かについて再考する。

横浜の小学校で先生がおっしゃったこと。
関西の田舎の小学校で先生がおっしゃったこと。

両方正しく思える。

環境によって最適解があるとのでは?とも一瞬思ったんだけど、兵庫の田舎町は私の母のふるさとなんだよね。

母はこどものころ、小学校の帰りにおじさんにこっちおいでと言われて体をさらわれた経験があると言っていた。
“田舎だから安全”ではない。それは断じて無い……。

そんなにお揃いの何かを身につけるのが規律を守るために大事なら、学校にいる間だけ名札をつけたらいいんじゃないのか?

……と、ここまで書いてグーグルで検索してみたら、やっぱ名札つける学校減ってきてるんだね! ああそうかい!!

ホー、回転式になっていて下校時は裏向きに名前をふせられる名札があるのか。
なるほどな~~~。

あ、服に穴があかないように対策できるグッズが100均にあるんですね……。

そうですか……いい時代になりましたね!!!

こどものころ、私は自分が名札をつけない理由について十分に訴えることのできないままモヤモヤしていたけれど、いまこうして言語化してみてよかった。

自己満足だけどスッキリしたし、引っかかっていた諸々が解決していると知れてよかった。

やるじゃん令和! 来てるな、令和!!

本当に小さなことだけど、昔は雑だった部分が細々とブラッシュアップされていると知ると、少し未来に期待できる気がするんだ。
この調子で頼むぜ令和!!!