二人分の人生を考えるということ

「人の三倍頑張らなきゃ、駄目なんだよ。足らないよ。自覚しなよ。
そうやってグダグダしているのを見るたびに、好きなのに、
見切りをつけて別れなきゃいけない日が来るんじゃないかって、
考えたくもないことを考えるよ」

泣く私。
いつも私は言い過ぎる。

反省して彼も泣く。

「俺は頑張る頑張るって口にして、頑張ってるつもりでも
自分に甘くて全く足りてない。いまここで、“頑張る”と言っても、
自分の言葉になんにも説得力がないから、もう“頑張る”とさえ口にできない。
このまま、自分は変わりたくても永遠に変われないのかもしれない。
てるこさんにはもっといい人がいるんじゃないかって思う。
俺みたいな最低なやつは、いなくなったほうがいいんじゃないかって思う」

駄目だ。私はこの子を追い詰めるだけだ。
そう思って部屋を出たら、ガンっとひどい音が響いた。
慌てて戻ったら彼がコタツの天板に頭を打ち付けていたので、すぐさま止めた。

「だって、自分で自分を殴りたい」
なおも泣いて言うので、殴って止めた。利き手じゃない右の手で。
…………そんなこんなで、今日は家に帰ったら彼氏がいませんでした。
携帯もうんともすんとも言わない。

こんな時に限って、私たちの住んでいる商店街は
パトカーと救急車が来ていたりして、
ただでさえ治安のよろしくない街なのに、もう本当に勘弁してほしい。

彼は「私のために」別れた方がいいんじゃないかと考えている。
私はどうしたいんだ。何が一番私のためになるんだろう。
彼のためには何がいいんだろう。答えが出ない。
きっと彼もそうだから、こうして行方眩まして逃げてるんだと思う。

帰ってくるかなあ。無事だといいんだけど。

加減を覚えたい。
頑張ってる人に「そんなに頑張らなくていいんよ」て、言うのは簡単やけど、
頑張りが足らない人に言う「お前頑張れ」は難しいね。

一人分の人生を考えるなら自分のさじ加減でいいけれど、
二人分の人生を考えるのって大変。

疲れてる。彼も。私も。
早く慣れたい。

まあこんな状況だけど、根底に愛がある限りは別れたりはしないと思います。

人に話すようなことでもないかも知れんけど、話したり文にすることで
気持ちに整理がつくってこともあるしね。

それに、私は、仲直りしてもっと二人はいい方向に向かうと信じたいんだ。
こういうことは繰り返してはいけないから、どこかに記しておこうと思って。

あ、帰ってきた。