北加賀屋の家を覗いてきた

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北加賀屋の家に行って来た。
昨日と違って部屋に灯りはついておらず、彼は留守。
灯りがついていたら帰るつもりだったから、無駄足を踏まずに済んでよかった。

心臓を落ち着かせて玄関の鍵を開ける。仄暗い。
パチリと玄関灯をつける。
うちの間取り、玄関を開けて真正面が彼のクローゼットなんやけど、
開け放されたその空間はがらんとしており、あたりにはごちゃごちゃとダンボールが積まれていた。

……なんだ、家決まったって報告は受けてないけど、荷造り進んでるんじゃん。
何をするにも腰の重いあの人の事だから、もっとだらだら居座られるのかと思った。

彼の部屋に置いてあった私の私物がひとっところに固めてあった。
小説、DVD、、貸してたマンガ、お酒、飾ってあった小ペンギンのぬいぐるみ。
混ざり合わさっていた二人の生活が、分けられてゆく。

疲れた私達にはもう「離れる」の一択しかないのだし、
こうなったからには早く出て行って欲しいと願っていたけど、でも、なんだろう。
こうやって現実を目の当たりにすると、胸がギリギリ痛むなあ。

薄暗いダイニングのテーブルの上、パキラとアスパラガスの生存を確認。

今日回収するつもりだったけど、この荷造りの様子だと案外早くこの家に戻れそうだし、
自分が今日こうして来たことは彼に悟られたくなかったので、
鉢に水をたっぷり与えて、そっと家を出た。

21時。神戸の佐々木家に帰宅。
「ただいま」と「おかえり」がある生活は幸せだとしみじみ思う。
佐々木はキッチンでカレーの材料を切っていた。

「彼は意外と早く北加賀屋の家を出て行きそうだ。胸が痛い。
けど、今はこれしかないし、これでよかったんやんね?」

昨日は泣いたけど、今日は我慢して泣かずに言った。
佐々木は「そーだそーだ!」と元気に後押ししてくれた。

ご飯を食べ、いくつかの話題が過ぎ、
「そういえば、ここのベランダからの景色見た事ある?」 と佐々木に手招きされた。
ベランダ側は佐々木が寝ている部屋なのであまり足を踏み入れてなかったんだよな。
窓から覗くと、マンションやら背の高い建物ででこぼこ切り取られた空と、
ぽっくり赤く光る神戸ポートタワーが見えた。

まあまさか元町のこの位置からそんなもんが見えるとは思ってなかったので、
ポカンとしてしまった。でも、綺麗だった。モシャモシャした心が随分救われた。
……ので、思わず佐々木に放った言葉は「わー!綺麗やん!ありがとう!」だった。
今考えたら「ありがとう」は変だ。でもありがたかった。

佐々木は「今年みんなに送った年賀状の写真はここから撮ったものなんやけど、
あまり信じてもらえない……」とぼやいて、部屋の掃除に戻った。
自分は今日、北加賀屋からデジカメを持って来忘れたことを後悔しながら
暫くポートタワーを見てた。
ここ数年、巷では青の電飾が流行ってるけど、こうしてみると赤い光もいいな。暖かくてさ。

(後日書くかもだけど職場で今色々あって)とてもとてもまだニュートラルではないし、
気持ちにムラがあるけど、小さな幸せは毎日に散りばめられてる。そういうのを大切にしたい。

写真は佐々木の作ってくれた、見た事ない粉のようなルーでこしらえたトロピカルカレー(?)と、
不思議な縦長の貝のバター炒め。どっちもとてもおいしかった。

ポートタワーの写メ撮ろうと思ったけど、もう灯りが消えてしまったので、また今度。

追記:佐々木家のベランダから。11月に購入したデジタル一眼にて撮影。冗談みたいにきれい。
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