ゆめにっき

起きてから同居人の姿が見えないのであちらの部屋の戸を開けたらそこには妹が住んでいた。
妹と喋るうちに、ああそうだもう私の恋人は亡くなったんだわと気が付いた。

妹は現実のいつかのようにうつ病で、実家にいられなくなって、うちにきたのだった。
妹は薬のせいと、栄養不足で、よく鼻血を出す。歯を磨いてもは歯茎からすぐ血が出るので、洗面所は赤の絵の具使った図工の後みたいなことになってた。

荷物をまとめた。病気を患った母に会いに行くために。うちの母は病院が嫌いだから、あまり長生きしないだろうと前々から思っているのだ。恋人と同じように、いつか会えなくなってしまう。会えるうちにたくさん会わなきゃ。

そういやあの子のお母さんとお姉ちゃん、いつでも遊びにおいでって言ってくれてたな。少し遠いけれど、母のとこ寄って顔見たら、その足で行ってし まおうかな。しかしまあ、喪失感はあるけど泣いてないなあ。まだ私自覚がないのかな。後でドカンと来るのかな。やだな。周りのみんなにも言わなきゃなあ。 もう随分経ってしまった。でも話したら泣いてしまいそうだな。何人かからは、すぐに電話やメールが飛んでくるだろう。大丈夫かと問われたその瞬間、きっと ダメになってしまう。ああ、このまま人に話さずいた方が、あの子が生きてるみたいでいいかもしれんなあ。暑いなあ。新幹線間に合うかな。切符持ったっけ。 普通乗車券と特急なんたら券と・・・。ほんとに暑いな。そうかもう夏か。早くて気付かなかった。しかし幸せだったなあ。あの子も最後まで幸せそうでよかっ た。ほんとうによかったな。悲しくなってきちゃったなあ。でもだれがいつ亡くなったって恨みっこなしだもんな。健やかに生きてる方が特別なんだから。生き なきゃなあ。生きてけるよ。今までたくさん幸せだったもの。大丈夫大丈夫。

私はぼんやり考えながら、焼けたアスファルトの上、カートをゴロゴロ引いて駅に向かい、新幹線に乗り込んだ。