形見の指輪

確定申告のために色々と準備をしなくちゃいけなくて
税務署だの銀行だのあちこち回ってたら母の形見の指輪を紛失してしまった。
あーあ、即死(魔法系)・石化・ゾンビ化を防ぐレアアイテムなのに。
(ファイナルファンタジー6 で、リムルとシャドウだけが装備できます)

母の闘病中は私の指にピッタリだったのに、体調不良で痩せてしまって
近頃指にはめてもグルグル回るから気になってはいたんだ。案の定これだ。

毎日未練がましくつけてたからオカーチャンが持ってっちゃったのかな? とか、
今日は独立してひとつの区切の日でもあったから、見守る心配が無くなって
フ ワッと消えたのかな?とか、前向きに解釈しつつも

「いやいやいや! 違げーよ、他でもないお前が無くしたんだろうがよ!
でもまあ、無駄にヘコむよりその捉え方よし!」
みたいなね……なんとも変な心地でいる。

申し訳ないのは妹だ。
母の指輪には小さなキラキラの石がいくつかついていたから、私や妹が
結婚することになった暁には、リフォームして形見分けしようと思っていた。
電話して「ごめんね」と伝えたら「キニスンナ!」だって。……その言い方。母かよ。

占いサロン フォレストランプで、占い師仲間の先生に
「失せ物探しってなんの占術がおすすめなんでしょう」と尋ねてみたら、
「私も母を亡くしてるから、少し気持ちがわかる。元気出して」
と、易をしてくれた。

現状は「震為雷(しんいらい)」で、未来が「地雷復(ちらいふく)」。
指輪については、「失せず隠さず」と のこと。出てくるってさ。

ていうか「失っていないし隠れていない」ということだから近くにあるってことだよな?
ふと、頭のなかに
「もし指輪そのものが出てこなかったとしても、母の想いはまさに”失せず隠さず”かもしれない」
という考えが浮かんで、すっと腑に落ちるものがあった。
自分一人ではそんな風には思えなかったろう。こういう、脳みそのひとりじゃ
開かない部分を開くために、占いは有用なのだよなあ、とも思った。

「なんかさー、姉さんが引っ越す時になってコロッと出てくるんじゃない
そんな気がするんだけど」
と、妹は言う。
実は私もそう思う。彼もそんなことを言っていた。

必死こいて探すのはやめた。出てくる時は、出てくるでしょう。
出てこなくたってそれでも 「失せず隠さず」 なのだ。