映画『この世界の片隅に』を見に行ってきました

映画は観劇やギャラリー巡りと違ってレイトショーという手段があるので、子育て中でも鑑賞のハードルが低くてありがたいなあ~。

映画『この世界の片隅に』を見に行ってきました。

今年観た映画は『ズートピア』『シングストリート』『シン・ゴジラ』『この世界の片隅に』の4本。

どれも素晴らしいお話でしたが、今年の映画観賞をこの作品で締めくくれて私は本当にうれしいです。

ヤルノヨー! とか、ドカーンバキーングシャー! とか、在りし日の青春!とかではなくて、ただありふれた生活っていう、ねえ。地に足の着く心地ね。

こうの史代さんの漫画の空気感、人々の生活の瑞々しさ、風景の美しさが、まんまそこにありました。……あったんですよ! すずさん、生きてた!!

私が子供の頃は、ゆうてもまだ戦後50年前後でしたので、夏になると学校で特別学習と称して戦争体験者のおじいちゃんおばあちゃんのお話を聞く授業や、体育館に集まって全校生徒で戦争映画を見る授業がありました。

毎度毎度、「戦争、空襲、原爆、人死ぬ、傷つけあう、怖い、悲しい、ダメ、絶対」と、言葉を覚えたての類人猿みたいな感想しか出てこなかったし、それ以外は許されないような雰囲気もあったように思います。

大人の恣意的な操作といえばそうだけど、しょうがなかったんですよね。
だって、関わった人がまだ沢山生きていたし、私たちの親世代がまだ“二世”なんですもの。
うちのおじいちゃんも足を鉄砲で撃たれて、金属片が埋まったままや言うてたよ。
だけど『この世界の片隅に』を見て、そういう、毎年夏が来ると民放であの世にも暗くて悲しい『火垂るの墓』が放送されるような圧迫感のある時代は終わりつつあるんだとホッとしました。

時代は違えど今とさほど変わらない、ごく普通の人々の、ごく普通の暮らし。
どうしたって8月6日に原爆は落ちるし、当たり前の日常が壊れるのはこれ以上ない悲劇で、ある種「戦争、ダメ絶対」みたいな作品よりもよっぽど生々しい痛みを伴うのですが、ただ恐い、悲しい、つらい、だけで終わらせないでくれたことにはありがたさすら感じる。

劇場を出るときには日常への愛しさが込み上げていて、一刻も早くお家に帰って家族を抱きしめたいと思いました。

ズートピア、シングストリート、シン・ゴジラの三本は、「ハー、うちに帰ったらまた家事育児仕事の日々か~~~このまま寄り道してビール飲んで誰かと話してえな!」てなもんだったんですけどね……。

映画化されてふと思ったのですが、この作品のタイトル、『この世界の片隅“で”』ではなく『この世界の片隅“に”』なのがとても素敵ですね。

「で」だと日向の目立つ花みたい。すずさんたちのための物語!という雰囲気になってしまうけど、「に」だと道端のありふれた花のようなさりげなさがある。
だから鑑賞者が一人一人の日常に立ち返って幸せを感じられるのかもしれないな。

■赤ちゃんと一緒に映画が見られるTOHOシネマズ ママズクラブシアター

映画『この世界の片隅に』 公式サイト