式の準備

式の準備はサクサク進んでいる。
もともとイベントサークル所属の二人でペーパーアイテムから動画からなんなら賑やかしの大道芸や司会まで持ち回りでできるくらいだし、私はブライダル関連ではないものの仕組みの似たイベント会社に長く勤務していたので、とにかく担当さんとツーカーで話が進む。早い。

……実際のところ、イベント会社勤務経験者の本音として、担当さんの提案に乗っかるのが一番いいと思うんだよね。
プロはクライエントの雰囲気や事情を汲んだうえで、費用対効果が高く顧客満足度の高い内容を提案しているので、素人が引っ掻き回さない方がいいんだ。
そうすれば相手も利益確保できてるから、無理聞いてもらわなきゃいけないポイントが出てきた時に、聞いてもらいやすい。
あと、ゼッタイゼッタイどうしてもっていう日取りや会場のこだわりや会社絡み親族絡みの事情がないのであれば、1年や2年前に会場を抑えるよりも、6か月前に、空いてる日にポンと入れてもらう方がいい。
うんと前に抑えたって会場抑え料と担当の人件費がかかるだけで、話が動くのは実際のところ半年前だから。

お世話になる式場は自宅の近くで、ブライダルフェアに行ったその場で即決したのだけど、スタッフのみなさんの心配りが本当に素敵。
担当さん、私達が「ピロウズが好きで今年の9/16がバンド結成25周年日なのでその日に入籍するんです」と話したら、「まさかpillowsの名前が飛び出すとは。自分は元バンドマンで、当時は北海道がアツくて、よく聞いていたんです」とびっくりしていらして、その日の、その打ち合わせの途中で、式場内のBGMをピロウズにしてくれた。
試食を兼ねたブライダルフェアだったんだけど、ケーキにバスターくんの旗も立ててくれて、魔法みたいだった。
いやあ~、夢のある仕事だなあ。ブライダル。
新郎新婦や、二人と親族の板挟みになる苦労もありそうだけど。

打ち合わせで「お色直しなどは要らないからその分おもてなしに回したい」と私が希望を述べたら、担当さんも「最近はそういうスタイルも多いです」と頷いたんだけど、珍しく彼が間髪入れず「お色直しは要るよ。しようよ?」と訴えて、その場でボロ泣きしてしまった。
なぜあんなにも涙が出たのかよくわからなかったのだけど、たぶん、婦人病で卵巣に穴が開ける手術をするかだとかそれをすると不妊になるだとか思っていたよりも大きな話になってしまったことや、8年という長い交際期間を経ても関係性が変わらないことで、女性としての価値や自尊心に傷がついていたんだろうな。
「ドレスを着てほしい。ドレスを着ているてるこさんを見たい」
と彼に言われて、心が救い上げられたようだった。

担当さんが退席して、泣いていた私が落ち着いて、それから担当さんが戻ってきて、「新郎の優しさに感動しましたッ」と、紙を差し出すので覗きこんだら、なんと作成し直された見積もり書は担当さんの魔法の力でお色直し代0円となっていた。
そのくらいのサービスやサプライズは、誰にでもしていることなのかもしれないけど、でも、嬉しかった。

というわけで今日は台風の中、ドレスの試着に行ってきました。
だいたいのことは提案を受けたその場で「じゃあそれで」と即決してきた私たちだが、いま、ドレスの後ろがびろーんとしてるセレモニー感のあるやつか、ふわっとしたラインの私みたいなチビに似合うやつかで悩んでいる。
「一週間仮押さえにしておくから決まったら連絡頂戴ね」と衣装担当さんに言われているんだけど、試着で撮ったデジカメの写真を行ったり来たりして、なんかもう見すぎてよくわかんなくなったりして、めっちゃ悩みながら、「こんな平和で幸せな悩みも人生にそうそうないなあ」と呆れて、二人で笑っている。