その一瞬で

ふと、母の遺影の「平成二十四年」の文字が目に入った。

一個人を取り巻く世界は二年や三年でコロリと変わってしまうのだわ、と思った。

私だって、三年前は、母が死ぬなんて思ってもみなかった。
父と距離を置き、実家をなくすなんて思わなかった。
自分が会社員を辞めて相談業一本で独立するだなんて想像もつかなかった。

……ようやく落ち着きつつあるが、ここ半年一年ほど、
親しい人たちの身辺がガヤガヤして大変だった。

ある友達は、短い交際で結婚を決めたが、同じタイミングで父親が倒れて、もう意識が戻らない。
ある友達は、その友人の式を心から祝いたかったのに、自分の結婚式が直前で破談になり、
追い打ちかけるように家族の病気も発覚し、心が追いつかなくて崩れ落ちた。
ある友達は、待望の第二子が双子とわかり、喜びと不安と逃れられない経済問題に直面してる。

仕事で出会うクライエントの方々だってそう。
話を聞いていると、予想だにしないびっくりするような出来事や想像を絶するような不幸が
この世にはゴロゴロしているのだと思い知らされる。

良し悪しはその人の「認知(受け止め方)」だと心理学では言う。
そりゃさあ、時が経てば「よかった」と思える日が来るのかもしれないけど
まっただ中にいる時はそんな気分には到底なれないでしょう。少なくとも私はなれなかったよ。

けど、物事が「悪く」変わることがあるなら、同じ振り幅で「良く」なることだってやっぱりあるはずなんだ。
全てが一瞬で不可能になるなら全てが一瞬で可能になることだってあるよ、絶対に。

世の中がどれだけ理不尽で不平等でも
「うるさーい!!私はきみががんばったの知っとる!」って叫んだるわ。
そして笑える日を信じる。