心は柔らかいのでリバウンドする

あれっ?
……と拍子抜けるほど、別れて結構すっきりしている。

むしろ別れるまでの一ヶ月二ヶ月の方が、我慢やら許す努力やら不安やらで辛かった。
私だってあの人と同様に疲れていたんだ。 一人は楽だ。

その気になれば誰かと「二人」になるのは難しくないと思う。
それこそ、結婚なぞすればとうてい一人に戻れないのだから、
こういう自由な一人の時間が訪れたことはむしろ私の人生にとって
良いことなのかもしれない……?
しれないが、それは後になってみないと、わからない。

今のところ、彼から引っ越しが決まったとかいついつ出て行くという連絡は受けていない。
もうねえ。毎日、家に置いてきたハイドロカルチャー(半土水栽培?)の
アスパラガスとパキラのことが気掛かりで気掛かりで……。
それで昨夜は、仕事が終わってから北加賀屋の家に向かった。

マンションの下から、彼の部屋の灯りがついているのが見えた。
バイトで留守なのを期待していたのだけど間が悪かった。

階段をちょっと登ったり止めたり、振り向いたり降りたり、
暫く挙動不審な行動をとったあげく、家に入るのはやめて引き返した。

神戸の友人宅に戻った頃は23時近く。
「遅かったね」と声かけてくれた友人に、無駄足食ったことを話した。

「パキラをね。小さい苗なんやけど、丈夫に育てて、大きくなったらいつか庭にでも植えて、
娘だか息子だかに『あれはおとーさんとおかーさんが昔から育ててるやつなんだよ』て
話そうと思ってたんよ。やから枯らすわけにはいかないの」

さよなら私の期待した未来。
大層な話してるわけでもないのに涙が遠慮なく溢れてきて困った。

「大丈夫」と「だめだ」をこうやってしばらくは繰り返すんだろうなあ。
しゃんとしたいんだけどなあ。

明日、もう一度北加賀屋へ行こうと思う。パキラもアスパラガスも生きていますように。