しんどい

それから三日間はもう酷かった。

一日目は死ぬほど悲しくて動悸がして。
今までの自分の行動をひとつひとつ振り返って、そのわがままな態度に愕然とし、
これは嫌われてもしょうがない、こうなったのは全部自分が悪いと思った。

二日目は夜、彼が帰ってこなくって、悲しいやらムカつくやら。
私がわがままな態度をとっていたのは悪かったけど、よくよく考えればそれは留年等々で
彼に対する尊敬の念が薄れてしまっていたからであり、あっちが悪いんじゃんと思った。

三日目は少し冷静になってきて、自分ははたして彼が好きだから悲しいのか、
それとも彼が2度留年してなおも就職活動が出来ないダメ野郎でも、頑張って支えて行こうと
思っていた自分の決意がへし折られたのが悲しいのか、わからなくなった。

四日目は一日目と二日目と三日目に考えたことが頭をぐるぐるして、
「あー、、女はこうやって考えて考えて、3時間おきに考えが変わるから結論を出すのが早いんだな。
別れ際の男はしばしば”何で急にこうなったのか理解らない”と言うが、あれは無理もないことだ」
とか冷静にいらんことを考えたりし た。

今日は五日目。そう。気がついたことがひとつ。
彼の態度がおかしくなったのは、正確には私が実家に帰る少し前だ。

ゼミの飲み会に行ってくる、と彼からメールが来た日があった。

あんた、ゼミの単位を取ったのは去年だろう。みんな卒業してるのにこのド平日に飲み会?
時期的にサークルの飲み会なんじゃないかな。サークルに行くのは仕事が決まるまで禁止と
二人で決めた手前、後ろめたかったのかな。どうしても行きたい時ぐらい言えばいいのに。
色々思いながらも、彼が行きたいと言っていることには変わらないので、「いってらっしゃい」と返信した。

その日は本当なら一緒に夕飯を食べられる貴重な日だった。
夏が来て私は「キッチンが暑いから料理をする気が起きない。あついあつい、どうにかして」と
わがままを言うばかりだったから、ちょっと反省して、今日はA氏が好きなものを作ろうと思っていた。
そんなの今思えば自分の都合だしわがまま極まりないんだけど、彼が飲み会に行ってしまうのは
ちょいと悔しかった。サークルだかゼミだか知らんが、ゼミの飲み会ならそれはそれで、
彼が以前好きだったという女の子も一緒の可能性があって、気になった。

彼はその夜帰ってこなかった。連絡もよこさなかった。
「今日は帰ってこないってことでいいんかな?」と、打ったメールに返信が来たのは夜中の2時過ぎだった。
「今日は帰らないよ ごめんね すき」。

よせばいいのに私は
「じゃあ明日のお弁当は捨てますね。私はうそつきは嫌い。帰ってこなくていいですよ」とメールした。

朝5時、人の気配で目が冷めて、部屋の戸を開けると彼が帰っていた。
彼は私の部屋へ来ると、正座して、「昨日、ごめんね。ほんとにごめん」とあやまった。

誠心誠意あやまってくれているのに私は取り合わず、その後も不機嫌だったり
わがままだったりする態度をとりつづけ、そのまま実家に帰った。

彼から話を聞くと、ゼミの飲み会というのは本当のようだった。
もっと上の代の卒業生が何か写真で賞をとったのでそのお祝いだったそうだ。
2次会のカラオケまで行ったはいいが、日頃朝5時から夜12時まで働いていて
常に寝不足だった彼は少しお酒を飲んだら潰れて寝てしまって、終電を逃してしまったそうだ。

これはひどい。私が酷い。

四日目の夜、昨日、暗い夜のダイニングで、
「あの時うそなんかついてなかったのに、ごめん」と謝った。
疑ったこと、悔しかったこと、すこし妬いたことを話すと、A氏はそうだったのかと
はじめて納得した様子で聞いていた。
最後に私がもう一度
「これからとか関係なく、あの日のことだけは謝りたかった。ごめん」と言うと
「うん」とだけ返事があった。

今は距離をおいているので、同じ家にいるのに、「ただいま」と「おかえり」すらないし
顔も合わさないでいる。つらい。